紅葉グルメ②
――秋、真っ盛り。まさに紅葉狩りの季節となりました。
紅葉見物を「狩り」と例えた由来は諸説ありますが、平安の世から貴族が行っていた物見遊山と、武士たちが行っていた鷹狩、巻狩が一体となり、「狩り」という言葉が紅葉見物と結合したといわれています。
この「鷹狩」「巻狩」の目的のひとつが「ジビエ」です。狩りの収穫……鹿、猪、雉などを食べるのが当時のごちそうでした。「ジビエ」はフランス語で狩猟で収穫した野生動物の肉のことです。
ついこの間もジビエブームが来ましたが、日本では歴史的に何度もジビエブームが巻き起っています。
それには、政府が肉食を禁じるという切ない事情がありました。
今回は鹿肉がなぜ「もみじ」といわれているかという話です。
時は飛鳥時代――第40代天皇である天武天皇が「肉食禁止令」を発布します。これは殺生を禁ずる仏教の影響、そして獣の「穢れ」を嫌う神道の両方の影響によるものです。それからのち、文明開化に至るまで、歴代権力者たちは何度も食肉を禁じていきます。
これによりあらゆる肉を食べることが「表向き」禁止されました。そう……「表向き」。
実は当時の人々は猪や鹿や鶏の肉が大好物。それは貴族や武士とて同じことでした。
人々は知恵を絞って、大好きな獣の肉を獣以外の名で呼んでごまかすようになりました。
鶏=「かしわ」猪=「ぼたん」馬=「さくら」そして、鹿は「もみじ」と呼ばれるようになりました。
江戸時代には百獣屋(ももんじや)と呼ばれる肉屋兼料亭が、ご禁制の獣肉を隠語で平然と販売し、大好評だったとのこと。
現代でも、フグを「河豚」と表記して魚と区別し、調理に免許が必要だったりしますが、同じようなことです。
さて、鹿は何故「もみじ」と呼ばれたのか?これは花札の鹿と紅葉が由来だとか。10月の花札には紅葉をバックにツンとすまして横を向いた鹿が描かれています。庶民の間で「鹿といえば紅葉」と関連付けられたのでしょう。さらに深堀すると、なぜ花札は鹿と紅葉が一緒になっているのか?
奥山に もみじ踏みわけ 鳴く鹿の 声きく時ぞ 秋は悲しき
これは、百人一首の猿丸太夫作の歌です。花札の絵柄はこの歌から着想された説が現在有力です。
この鹿の「ツンとすまして横を向いた」姿から、人を無視する意味の隠語「シカト」(鹿+10月)も誕生しています。
この「シカト」は、しっかり、はっきりという意味の「確と(しかと)」と混同しやすいので注意が必要ですね。
例えば、
我々Re.Ra.Kuのセラピストは、お客様の質問に対して「シカト」したりしません。どんなご質問でも「確と」お聞きいたしますので、ご遠慮なくどうぞ。
といった具合です。
ともかく、これから体調を崩しやすい季節となります。もみじ肉は脂質が牛肉の10分の1で、鉄分も豊富。お鍋などで召し上がって健康的な秋を過ごされてはいかがでしょうか。
前回の紅葉グルメは以下のリンクからご覧いただけます。
紅葉グルメ